【米国便り13】ビアンバー/ゲイバーとミックスジェンダーと人種

 米国のビアンバーには「男の人」も当然のように入れるし、ゲイバーにも「女の人」がお客さんとして普通にいます。という事実を知って、私はとってもびっくり!

 私はこれまで日本で「ミックス」にとってもこだわってきました。「ミックス」といっても主にそれは民族や障害の有無などについてではなく、主にジェンダーやセクシュアリティーについてのことです。具体的には、「ゲイだけ」や「レズビアンだけ」という集まり方をやめよう、「男だけ」「女だけ」のグループや集まりを指向するのは嫌だな、みたいな話です。というかもっとちゃんと言うと、「すでに『私たち』はミックスなんだからそのことを認めよう」「『ミックスであること』を肯定的に考える文化や考え方をつくろう」「特定のカテゴリーやアイデンティティーを持ち出すことでわざわざ『私たち』の内部に権力関係をつくり出すのはやめよう」というようなことです。う〜ん、くわしくは以下の文章を読んでもらえると嬉しいです。
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●私たちにとってリブとは何か
http://barairo.net/works/TEXT/lib.html
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 で、こういった主張をするにはその背景となる現実があって、日本のゲイバーのほとんどは女子禁制、ビアンバー(もしくはレディースバー)も多くが男子禁制。クラブイベントなどもやっぱり男女別に別れていたりします。時間帯でオッケイにしたりとか、最近ではミックスのところもあるけれど、基本は男女別です。サークルでも、私が活動を始めた当時はほとんどが現実にはジェンダーで別れていたり、また場合によっては「同性愛」が会のキーワードになっていました。

例-----
ゲイフロント関西・OLP・動くゲイとレズビアンの会・大阪ゲイコミュニティー(←ここは例外的に看板が「ゲイ」でもゲイとは直接関係しないテーマをたくさん扱っていた)
ビアン系はLOUDを筆頭に「レズビアンとバイセクシュアル」という出し方をするところもあって、やや状況が違った。
以下を参照下さい。
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●バイセクシュアルは これまでどのように言及されてきたか(抄)
http://barairo.net/special/bi/poko12onWEB.html/text.html
(後半部分にLOUDのこととか書いてある)
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注-----
「男だけ」というのは、通常はそういったことを打ち出す必要がない。なぜなら、今の日本社会においては、多くの(特に公的な)場所は事実上「男達」の場所で女の人は二級市民としてしかそこにいることが出来ない。そういった状況に対抗する必要から「女だけ」で集まる場所がつくられたりしている(メンズリブの文脈で「男だけ」という出し方がされることはある)。なので、「男だけ」と「女だけ」では、そもそも位置というか状況や意味が全然違う。-----ということを書いておかないとやっぱりまだ誤解されかねないかしら。場の中におけるマイノリティーが自身のアイデンティティーを肯定的に打ち出していく戦略には、一定の合理性というかリアリティーがある。そのことを踏まえた上での話をわたしはしているつもりです。これも書き出すとあまりに長いので、以下のテキストを参照して頂けると嬉しいです。
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●「バイセクシュアル」 という問題領域から見えるもの
http://barairo.net/special/bi/poko12onWEB.html/about_BI.html
(第3節「 アイデンティティーはいらない!」を読んで!)
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 なので、こういった状況が私にはまたさらに抑圧的であったので、「ミックスであること」を肯定的な価値として打ち出したかったのだと思います。分かりやすい言い方をすると、会の名前や目的が「同性愛」をキーワードにしていると、異性愛でも同性愛でもない私はそこにいてもいいのか、私はどうなるのか、当時でもすでにやっぱり不安があったからです。(付言すると、今ならさらに、「男でも女でもない自分」はどこにいたらいいだろうと途方に暮れる時もあります)
 そういうこともあって、私が結成に加わったプロジェクトPは正式名称を「レズビアン?ゲイ?バイ?ヘテロ?......?生と性はなんでもありよ!の会 プロジェクトP」と言いました。でもまぁ、今から思えばこの名称も、トランスジェンダーやインターセックスやAセクシュアルやクイアを無視しているとか、「?」をつけて誤魔化そうとしているとはいえアイデンティティー語にこだわっているとか、いろいろ不十分なものだとは思います。(と言うか、当時はそもそもそんな言葉を知らなかったのよね)
 そんな歴史を生きてきたので、米国では、ビアンバーもゲイバーもジェンダーによる入場制限をしないことがスタンダード(標準)だと知った時は、かなりびっくりしました。
 実際Portlandでビアンバーに行ってみても、少なくともお客としては違和感なく受け入れられました。念のために言うと、その時の私は「女として」パスするようないでたちではありませんでした(もしかして一瞬パスしてた?)。他のお客さんも、私がいること自体は当然のこととして受け入れた上で会話をします。内心、かなり嬉しかったです。例えば以前、レズビアンをキーワードにした会であるOLPに行った時も、ちゃんと歓迎されたりもしましたが、それは知り合いだったからなのね。でも知り合いでも何でもないところで、「あんた何しに来たの」みたいな目にあまり遭わないのは、やっぱり嬉しいです。場の集まり方のキーワードが「おんな」だったりすると、典型な女としてパスすることのまずないわたしは、やっぱりどうしてもちょっと躊躇してしまうのね。(というか、もしかして最近では性自認がどんどんFに寄っているような気がするのは気のせいか)。そのあまりのうれしさと、それとやっぱり英語アレルギーが少しあってなかなか緊張が解けて和むという感じにはその時はなれなかったんだけど、うん、その日はとても嬉しかったのでした。ちなみにそのビアンバーは「KARAOKE(ちゃんと英語でこう書いてある。カラオケのことね)」の日で、お客さんが楽しそうに唄っていました。カラオケの画面にポルノっぽいのが出てきたりして、それで盛り上がっていたりしてね。わたし(たち)も何か唄おうかと考えたけど、英語の歌は無理かなと断念。でも今度行く時は、定番中の定番だけどマドンナを唄えるように練習していくことをエミさんと約束しました。
 確かに日本でも「例外的に」「信用出来る人だから」「友達だから」「知り合いだから」入れてあげるというような場の作り方は存在します。でも米国での体験はそれとは基本的に異なる状況です。やっぱり何より、一番はじめから「この場所には誰でも来ることが出来る」と明確に決まっていると、来る人もはじめからそのつもりでその場に来るわけで、そういった覚悟があることを前提で場が出来ていることこそが必要なんだと再確認した次第です。
 Portlandではゲイバーにも行ってみました。アルコールを扱う店はドアが威圧的でしかも店の中が見えなくて入りにくかったけど、入ったらまぁふつうのバー。カウンターにはカワイイ(イケテル風の)バーテンのお兄さんがいて、かっこよくカクテルをつくってくれます。あと、ここでもKARAOKE。なんか順番を待って並んでいました。客は全部で50人から100人くらいいて、で外見上の女の人が数人います。それが当然という感じで、周りの人とお話ししていました。
 「何でミックスジェンダーなの?日本ではほとんどセパレートだよ」とエミさんに聞くと、公民権運動以来の歴史のせいじゃないかとの話。公共の場所で人種によって排除したりすると差別となって厳に禁じられるということだと思うんだけど、それと同様、公共の場所でジェンダーで人を排除することは問題になるようなのです。なるほどね。
 で、話が人種に行ったところでこのゲイバーの人種比率。これがね、ほとんど白人でした。外見上の黒人は数人。女性の比率と同じくらいでした。別の人に聞いた話では、法的に人種による排除は違法だとしても、実際にはバーとか集まる場所も人種・民族別に別れていることが多いとのことでした。ということで、わたしが行ったお店は、白人男性のゲイが中心のお店だということですね。
 Minneapolisでは、ドラァグショーのあるお店に連れて行ってもらいました。そこももちろんジェンダーミックスで、しかももちろんセクシュアリティーミックス。ノンケもたくさんショーを見に来ています。ショーをする人やアナウンスの人が「私たちはstraightも歓迎しますわよ」とやたらしつこく言っているのは、やっぱり半分は嫌み(とあきらめと少しだけ希望)が入っていますね。ショーのスペースとは別に踊るスペースもいくつかあるんだけど、これがまた人種別にというか白人が多い階と黒人が多い階に別れていて、流れている音楽も少し違っていたりしていました。
 わたしはこれまで、人を分ける時の指標や差別の指標として、「人種・民族」と「性別」とを並列に並べるような言い方をよく英語文献で見たのですが、これまであんまりぴんと来ていませんでした。でも、こんな米国の状況を見ていると、少しずつ分かるような気がしてきました。

 日本における民族問題について考えたことは、また別に書きますね。


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投稿者 hippie : 2004年9月 1日 18:52 | トラックバック
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