第3回レズビアン・ゲイ・パレードを、私たちが豊かな関係を築き上げていくきっかけとするために

田中玲子(OLP) 日比野 真(プロジェクトP)

 ラブリスダッシュの読者の皆さんへ、今年のレズビアン・ゲイ・パレードで私たちが何を訴えていたのかを知ってほしくて、編集部の方にお願いしてビラの折り込みをさせていただきました。必要とあれば東京のパレード実行委員会(TEL/FAX 03-3356-2055)の意見もご自分で聞いたうえで、判断していただけるとうれしいです。

 署名を集めたプロジェクトP排除問題についての要望書にも書いたとおり、レズビアン・ゲイ・パレードは、すでに、レズビアン・ゲイだけでなく本当に様々なセクシュアリティーや立場や考え方の人々が注目し、参加するものになっています。そして、いまやレズビアン・ゲイ・パレードはパブリックなみんなの企画であり、気の合うもの同士だけでつくるものではなくなっていると私たちは考えます。つまりそれは、パレードをめぐって、本当に様々な意見や立場の違いがあるということも意味しています。だからこそ大切なのは、そのようなお互いの不一致を、どちらかが勝つ/負けるといった争いにではなく、視点の複数性や多様性といった豊かさにつなげていくようなコミュニケーションの方法を発明して、私たちがそれに慣れていくことだと思うのです。そしてそのためには、まず第1に、「私たちは皆同じ考えを持っている」というふりをすることを止め、パレードに参加している「私たち」の間にある違いを公然とはっきり示すことこそが必要だと私たちは考えました。なぜなら、私たちの間にはこんなにも違いがあるということを確認しながらも、お互いが共存している姿を社会的に示すことこそが、「みんな同じ」で「たった一つの規範」に人々が従うのを当然とする強制異性愛社会と闘うことになるのだと思ったからです。
 
 今回の件に引きつけて考えてみましょう。
 プロジェクトPが実行委員会への登録にあたって提出した意見書で提起した問題は、�「レズビアン・ゲイ解放運動において一定の活動実績があること」を実行委員の資格要件とすることの是非�パレードを「お祭り」ではなく「政治的なデモンストレーション」であるとあらかじめ決めてしまうことの是非�レズビアン・ゲイ以外のセクシュアルマイノリティーへの視点の有無�たった3人の継続委員会で基本方針を決めてしまうことの是非、の4点でした。残念なことに、今日現在に至るまで実行委員会によるこれらの意見に対する正式な回答はプロジェクトPには届いていません。
 例えば「パレードを政治的なデモにする」「主にレズビアンとゲイのことを訴えるデモにする」という考え方をする人がいてそう提案するのはごく当然のことです。継続委員会のメンバーは「様々な意見があるからこそ、あらかじめ基本方針を決めておくことが必要」と繰り返し発言していますが、問題は、そのような継続委員会の提案自体がパレード参加者の間できちんと検証される機会がないということなのです。第1回・第2回のパレードを引き継いで第3回のレズビアン・ゲイ・パレードを行おうというのであれば、少なくともそれまでに様々な形でパレードに関わってきた個人や団体に開かれた形で、「基本方針」そのものを検討することは必要なことではないでしょうか。
 また、パレード参加者の多数意見に沿ってパレードが運営されることによって、少数意見が通らないこともあり得ることです。しかし、委員会側の意見に異論を唱えたからといって実行委員会から排除するなどというのは、少数意見の排除どころか、どんな意見がパレード参加者の多数意見かを検証する機会さえ奪うものだと言えます。これは、まさに討論を拒否した一方的な結論の押しつけ以外の何ものでもありません。
 
 プロジェクトP排除問題と同様に、実行委員会が討論を拒否するという問題があったのが、「第3回レズビアン・ゲイ・パレード宣言(案)」の採択です。ここでも一番問題なのは、この「宣言(案)」についてオープンな形での討論が実質的に一度も行われていないということです。
 パレード当日の混乱を避けるためにも、パレード前日の実行委員会で「採択に異議がある」ということをOLPやゲイフロント関西は主張しましたが、実行委員会では「宣言(案)」はそもそも議題としてさえ取り上げられませんでした。「宣言(案)」は「レズビアン・ゲイ・パレード」(パレード参加者全体)としての採択が予定されていたので、パレード当日のプライド集会冒頭で採択の提案があったときに「異議あり」と声をあげて意思を表明するほかありませんでした。パレードの場で、討論を行った上で「採択すべき」という人が多数を占め、採択されるのであれば、それは当然のことです。しかし、採択に異議を申し立てる人は多くても、当の実行委員会がきちんと理由を述べて採択を主張することはなく、南定四郎実行委員が「パレード破壊者の煽動にのるな!」と大声で繰り返し続けただけでした。私たちは、あの場で討論にならなかったことを本当に残念だと思っています。

 そして、磯貝宏実行委員の「レズのくせに何しやがるのか」発言です。私たちは、この発言は次の2点において問題だと考えます。まず、レズビアンの権利を主張するための場であるレズビアン・ゲイ・パレードにおいて、主催者側の実行委員のひとりが、レズビアンを罵倒する言葉をはいたこと。これは、まじめにレズビアンとの共同作業を行おうと思っているのかどうか疑いを持たざるを得ない発言です。つぎに、相手がレズビアンではないかもしれないのに、女性であるだけで一方的にレズビアンであると決めつけたことです。これについては、レズビアン・ゲイ以外のセクシュアルマイノリティーも多くパレードに参加しているという事実認識がなかったとしか思えません。

 上記のように、今回のパレードには多くの問題点があったと私たちは考えています。
 しかしある意味では、これらのことはどこにでもあるよくある問題だと言えるかも知れません。自分とは異なるセクシュアリティーや立場の人と何かをやろうとするときに、コミュニケーションの不足からお互いの関係に齟齬がうまれることなどは、現実には日常茶飯事です。大切なのは、自分の言葉に対して違和感を表明し批判してくる人の話を聞き、考えていくことだと思います。だからこそ、どんな人に対してもきちんと自分の意見を伝え必要ならば批判していくことが、分裂や排除のためではなく、まさに共同で作業をしていくためにこそ必要なのです。そして、批判された人は逃げたり開き直ったりせず、誠実に話し合いにのぞむことが、お互いのコミュニケーションの可能性を開くのだと思います。そしてこれはもちろん、私たち自身に課せられた課題であることは言うまでもありません。人は時間をかけて、ゆっくりとではあるけれども確実に変わる可能性を持っています。そして、その可能性こそが様々な人が参加するパレードの最大のメリットのひとつなのではないでしょうか。
 私たちは、多数派少数派に関わりなく1人1人の意見がきちんと尊重され話し合われる、そんなパレードの運営をこそ望みます。とても大変な作業ですが、ていねいな討論を積み重ねていく中で多くの人々の信頼を獲得し、新たな関係を模索し築いていくことが私たちは大切なのだと考えています。

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