LGBTと企業(その1)

 「LGBTと企業」というタイトルで何か書けといわれたら、もしくは企業に対して「LGBTの立場から」何か書けといわれたら、あなたは何を書く?

 おそらく私なら、「トランスジェンダーなど典型的ではない性別の有り様の人が、そもそも就職できなかったり、働きにくいのを何とかしてくれ」「女性を正社員として雇わなかったり、雇ってもいろんな口実を付けて賃金を男性より低くしたり、職場の雰囲気が男性中心的だったりするのを改めてくれ」とかいうことを、まず書くと思います。
 だって、そうですよね。例えば「典型的GID・手術も戸籍変更も完了・完全にパスしている人」ならともかく、そうでない人はまず履歴書を書くときにどの性別で行くのか、まず悩む訳です。そして残念ながら、トランスジェンダーであることがばれたときには、職場で色々な嫌がらせにあったり、クビになったりしてしまうことも少なくありません。(例【自彊館裁判】)
 また、賃金に女性差別があるということは、もう確実に明らかなのに、今の社会は、企業は、それをなかなか変えようとしていません。(パートを除く社員だけを見ても、女性の賃金は男性の約3分の2しかありません【厚生労働省資料】) 大企業ほど、男女の賃金格差は拡大しています。(【連合のサイト】)

 もし私が、「LGBTと企業」というタイトルで何か書くのなら、やっぱりこういったことを取り上げて、企業に対して、差別に対する是正や、差別を企業の中から無くしていくための取り組みを求める、ということが中心になります。

 さて、そんな私ですから、東京プライドパレードの公式ガイドブックを見たときには、やっぱり私は、どうもこことはウマが合わないな、と思いました(苦笑)。
 そうなんです、東京プライドパレードの公式ガイドブックで、「フロント特集」として巻頭7頁にわたって特集されている特集記事のタイトルが「LGBTと企業」なんです。
 この特集記事では、LGBTマーケットのことを「比較的高学歴・高収入の人々が多く、自己のライフスタイルに敏感、可処分所得が高い……」などと書いています。確かに、トランスではないゲイ男性には、大企業の正社員も多いことでしょう。ゲイであることで後ろ指を指されても大丈夫なようにと敢えて医者になった人、弁護士になってからゲイリブを始めた人、そんなゲイも知っています。もしかしたら、本当に、トランスではないゲイ男性は「比較的高学歴・高収入の人々が多く、自己のライフスタイルに敏感、可処分所得が高い」のかもしれません。
 でも、でもね、それはゲイのことですよ。少なくともバイ女性やレズビアン、トランスジェンダーの人に関しては「比較的高学歴・高収入の人々が多く、自己のライフスタイルに敏感、可処分所得が高い」というような傾向は、全然ありません(苦笑)。どうして特集のタイトルは「LGBTと企業」なのに、内容は「ゲイと企業」のことしか書いてないのでしょうか。「LGBTと企業」の特集なのに、どうして企業による女性差別やトランス差別に一切触れていないのでしょうか。

 「東京レズビアン&ゲイ・パレード」が「東京プライドパレード」に名称変更したことは、よいことだと思います。ただその時に「名前だけ変えても実態が変わらなければあまり意味がありません」「名前を変えただけで同性愛者以外の性的少数者が対等に扱われるように直ちになる訳ではありません」「(名称変更の以後も)これまで以上に困難な道のりであることは確実です」と私は書きました。今年の東京プライドパレードの公式ガイドブックは、そのことを非常に分かりやすく示してくれています。特集「LGBTと企業」は、現在の東京プライドパレードの中に男性同性愛を中心とする力関係(ゲイ中心主義)が存在していることを、とても分かりやすく示してしまっています。

 しかし、声を上げる人がいたことで、パレードの名前も変えることができました。東京プライドも学習会をするなど、完全にゲイ中心主義を開き直っている訳ではありません。ですので、確かに遠い遠い道のりだとは思いますが(苦笑)、これからも声を上げ続けることで、少しずつ問題点が改善されていくんだと、私は思います。
 ということで、反省会に行く方、がんばって下さい!!

参考テキスト

【米国便り11】ポートランドの「同性婚」

……これまで、(メインストリームの)ゲイの運動は、企業を味方につけるために「ゲイは金持ちだ」という宣伝運動を地道にしてきた。その結果、大企業からの広告が米国のパレードのパンフレットにはたくさん載っている。そんな運動の積み重ねのおかげで、レズビアン・ゲイが社会的に認知されてきたという面もあると私は思います。でも同時にその結果として「ゲイは金持ちなんじゃないか。ゲイは差別なんかされていないじゃないか」と、貧乏な人たちには思われているらしい。……

【米国便り7】カストロストリート

……カストロでホームレスになったりする人がいるんだけど、そういう若いゲイのコを、カストロストリートに実際に住んでいる金持ちのゲイが警察とつるんで排除したりしているのね。カストロストリートは、白人の中産階級の、金持ちの街だよ。……

※追記
 企画をするときにお金が必要なのは事実なので、企業からお金を集める事自体を完全に否定している訳ではないよ。誤解なきよう。ここは例によって、もし「LGBTと企業」と掲げるなら「ゲイと企業」のことだけが取り上げられるのはおかしいんではない?ということをまず言っているだけ。

“LGBTと企業(その1)” への5件のフィードバック

  1. 今年のパレードでびっくりしたのは、実行委員の人が何度もしつこく、「女性の方のトップレスはやめてください。パレードが出発できなくなりますよ」と言っていたこと。女性(に見える人)だけ胸部の露出を禁止する、っていうのは南さんがパレードやっていた頃と変わらないんだなぁ、と思いました。警察からいろいろ言われるんでしょうが、警察とやりあって表現の権利を獲得していく、というくらいの気概があってもいいのでは、と思いました。

  2. 以前は「レズビアン&ゲイ」という名称についての問に対して
    とても丁寧且つレスポンスをありがとうございました。
    さすがひびのさんということで、深く感謝いたしております。

    さて、以前の書き込みで札幌のNPO法人アット
    (札幌レズビアン・ゲイコミュニティサポートセンター)

    につきひびのさんが、

    >札幌の状況がよく分からない(例えば、現場の人たちで
    >とことん話し合った上で「今は別々にやろう」と合意した
    >可能性だってない訳ではない)のと、「NPO法人at」が
    >どれくらいの規模のもので、誰がやっているのか、
    >その基本的な方針など、分からないことばかりなので、
    >ちょっといま判断が出来ません。

    とおっしゃっていたのですが、その後、偶然、
    NPO法人アットの定款上の目的などを見ることが
    できました。

    所轄庁である北海道庁の担当部署HPに掲載されている
    NPO認証リストです(アットは管理番号1029です)
    http://www.pref.hokkaido.lg.jp/NR/rdonlyres/D49184DB-81A4-42E5-AE00-20AD7567755C/0/npodantai191130.xls

    この定款上の目的で、
    「レズビアン、ゲイを主体とした性的マイノリティ」
    という語が4回も使われています。
    このこと自体、「バイセクシュアルやトランスジェンダー、
    インターセックスやAセクシュアルなどに対する二級市民扱い」
    とは言えないでしょうか?

    また、
    >誰がやっているのか

    なのですが、上記のリスト上の代表者は桑木昭嗣さんです。
    ご存知かもしれませんが桑木さんは、レインボーマーチ実行委員や
    札幌ミーティングメンバー経験者で、現在はゲイバー経営や
    Qwe’reというクラブイベントオーガナイズチームのトップである
    ケンタさんです。

    アットのほかの主要メンバーも、(ひびのさんもご存知の)竹村勝行さん、
    今年のレインボーマーチ副実行委員長 川田陽子さんなど
    レインボーマーチにバリバリ関わっていた(orいる)方々です。

    ちなみに、今年のレインボーマーチ、
    実行委員会が参加者向けに準備した更衣室が
    男女別に分かれていたそうです
    (参加者から教えていただきました)。

    パレードという場で「男女」という区別をするのは
    いかがなものでしょうか。個室を幾つか準備という
    選択肢もあったと思います。あの東京パレードさえ、
    今年は、更衣室は男女別ではなく個室だったそうです。

    ひびのさんが東京プライドパレードの内実を批判されるのであれば
    (私もその方向性は当たっていると思いますので、なおさら)
    札幌のあり方についても批判すべきところは批判すべきではないかと
    思うのですが・・・。いかがでしょうか。

  3. さらに訂正。自分のHNを間違えてしまいました(汗)。
    佐藤 優であれば、例の外務官僚ですよね。
    失礼いたしました。

  4. 佐藤博さん、こんにちは。
    「NPO法人at」は、私にとっては、もしかしたらOCCURのようなものなのかもしれませんし、その場合は「レズビアン&ゲイ」という看板は、いついかなる時でも許されないの?(http://barairo.net/works/index.php?p=81)」でも書いたとおり、私は特に何もしません。また、「レズビアン・ゲイ」のアイデンティティーに依拠している場合でも、「OUT: ホモフォビアを叩きのめす!プロジェクト(http://d.hatena.ne.jp/hippie/20071023/p2)」で書いたように、WOMの人達のようなケースだってあり得ます。
    ですので、私に何かを求めるのではなく、まず、佐藤さんご自身で、必要と思われるのであれば、必要な行動を取っていただければと思います。

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