ポートランドのあるオレゴン州マルトノマ郡では、今年2004年3月、法的書類上の同性同士の結婚が公式に認められました。でもその後これが問題となり、現在は裁判によって差し止められています。そして、今年11月には、法的書類上の同性同士の結婚を禁止するためのオレゴン州憲法の改正の是非を問う住民投票が行われるという話です。
さて、西海岸で最初のDVシェルターの創始者で、米国シェルター業界の全国団体NCADVの創始者の一人でもあり、また非暴力主義でも知られるボニー・ティンカーさん(Bonnie Tinker さん http://www.lmfamily.org/who/bonnie.html)という人がポートランドにいます。そのティンカーさんにお会いしてお話しをお伺いする機会がありました。
ティンカーさんの話によると、先の同性婚の住民投票、このままでは負けかねない情勢だということでした。というのも、黒人や貧乏な人たちが憲法の改正を支持する(同性婚の禁止に賛成する)見込みだからだそうです。えっ、何で?と思ったのですが、お聞きしたお話には説得力がありました。
これまで、(メインストリームの)ゲイの運動は、企業を味方につけるために「ゲイは金持ちだ」という宣伝運動を地道にしてきたそうです。たぶんその成果が実って、各地のパレードや大きな企画には、例えばIBM・XEROX・MasterCard・VirginMEGASTPRE・Volkswagen・Tanqueray・Audiなど大企業が広告をこぞって出しています。(日本ではまだ考えられませんが、例えばトヨタも、LG系の運動やコミュニティーに対して広告を米国では出しています。)((但し広告を出したりしているからといって、社内で同性カップルを異性カップルと対等に待遇しているわけでは必ずしもない))
そして実は「ゲイは金持ちだ」というのは事実。だって、今は紛れもない女性差別社会なんだから、「男性二人」のカップルが、「女性二人」や「男女カップル」より金持ちなのは、当たり前なんです。
そんな運動の積み重ねのおかげで、レズビアン・ゲイが社会的に認知されてきたという面もあると私は思います。でも同時にその結果として「ゲイは金持ちなんじゃないか。ゲイは差別なんかされていないじゃないか」と、貧乏な人たちには思われているらしい。そういった状況があるのに、運動の側が「それはホモフォビアだ」「ゲイ差別だ」ということだけを言って同性婚反対派の人たちを遠くから攻撃だけしていては、仮にその主張が正しい主張であったとしても全然説得力がない、ということらしいです。なるほどね。
だからこそ今は、同性婚反対派の人たちを切って捨てたり、「話しても無駄だ」「差別だ」「ホモフォビアだ」などとレッテル貼りをして仲間内で安心するのではなく、むしろ逆に同性婚反対派の人たちの中に積極的に出向いていって、丁寧に議論や話し合いをするべきだ、というような趣旨のことをティンカーさんは言っておられました(と思います)。そして「大手のゲイ団体の活動家はそれをしようとしていない」との苦言も。
たいがい「私たち」は、自分と意見の違う人とは「話しても無駄だ」と思って、「自分とは違う『変な人』もしくは『間違った人』」というレッテルを貼って排除しようとしたり、力比べに入ることが多いですね。でも、自分とは異なる意見を持つ人にも、多くの場合はそう思うに至るその人なりの「合理的な」理由があるものであり、それを理解し知った上でその相手の文脈に即して話すことで、対話が可能になり、合意も生まれるはずだ、というような趣旨のことだと思いました。((例えば、「トイレや銭湯の男女分け自体がそもそも問題だしやめるべきだ」とひびのは主張するけれども、現時点においてあくまで男女分けを求め男女別に固執する人たちには相応の合理的なリアリティーがある。従ってそのリアリティ--性的な暴力が容認されている社会であること--に対する取り組みも行っていくことが必要、とか、いろんな場合に当てはまると思った))
その他、ティンカーさんとはメインストリーム系のレズビアン・ゲイの運動への批判で盛り上がっていました。やっぱり米国でも、イラク戦争のこととかををコミュニティーの中で取り上げることに抵抗を示す人もいるとかね。どこも同じね。
【米国便りのバックナンバーについて】
・私のサイトに掲載を始めました。
https://barairo.net/UStour2004/
・メールグループのwebサイトから読むことが出来ます。
http://groups.yahoo.co.jp/group/barairo510/
・webアクセスが困難な方は、直接ひびのまでお問い合わせ頂ければ直接お送りすることも出来ます。
コメント欄への、新規の書き込みはできません。
ご意見などは、直接、メールなどでお送りください。
USツアー2004 メインに戻る
サイト案内:イベント:ニュース:特集:主張/テキスト作品:WEB作品:WEB店舗:グループ:リンク:お問合わせ |