閉鎖的な「立ち上げ時の実行委員会」
今回の「関西レインボーパレード」とその実行委員会がつくられる過程は、閉鎖的で、「密室政治」という言葉そのものでした。ギョーカイの一部の人にだけ声を掛け、実行委員会に参加できる人を選別し、「どのようなパレードを行うのか」というパレードの根幹部分については一部の人だけで勝手に内容を決めて、一方的/通告的にコミュニティーに対して呼びかけが行われました。
関西にも、たくさんの当事者団体があり、多くの当事者がいます。本来パレードの主人公となるはずのそういった当事者たちは、事前に意見を求められることもなく、従ってパレードについての開かれた形での話し合いの場も一度も設けられていません。当初の実行委員会は、自分たちの手足として使える「ボランティア」は募集しましたが、例え関西在住の性的少数者の当事者であっても、実行委員会に参加することが権利ではありませんでした。
パレードは公的なイベント
一部に、「パレードは一任意団体が主催するものなので、情報公開を求められるいわれはない」という人もいます。確かに、もし実際にパレードを歩くのがその任意団体の構成員だけなのであれば、そういった意見はそれなりに妥当だと思います。その任意団体の構成員の人たちが、その任意団体の内部で話し合いを行って「任意団体としての見解」をまとめ、それを世論に訴えるというようなパレードの場合であれば、パレードの意志決定過程を外部に公開する必要は必ずしも無いでしょう。
しかし「関西レインボーパレード」はそうではありません。パレードを歩く主体として想定されているのは、まず何より関西の性的少数者たちです。パレードは「関西の性的少数者のパレード」として社会に登場することになります。社会に対して「これが私たちの姿です」と訴えている主体は、任意団体ではありません。大阪府知事や大阪市長がメッセージを寄せるのも、パレードが「一部の性的少数者(任意団体)が開催するプライベートなお祭り」ではなく、「関西の広範な性的少数者が参加し、その意志を反映する、公的な性格を持つパレード」だからです。
そして実際、パレードの公式サイトにもこう書かれています。
「関西でもパレードをして、LGBTとその仲間たちがたくさんいることを、多くの人に知ってほしい(共同代表 中村雅樹)」
「パレードはみなさんが主役です(共同代表 岡亜沙美)」
「パレードは誰のもの?と聞かれたら、私は、歩く『あなたのもの』だと答えたい(事務局長 尾辻かな子)」
まさにその通りで、パレードはパレードに参加する「みんな」のものです。そして、「みんな」のパレードのあり方を、一部の人たちだけで勝手に決めていいはずがありません。
関西に住む性的少数者自身が、自分のこととしてパレードに関心を寄せ、パレードについての情報公開を求め、もしくは実行委員会に参加して主体的にパレードを担おうとするのは、当然の、当たり前の、望ましい成り行きです。パレードが一部の人たちだけの私的なパーティーではなく、「みんなの想い」を表現する公的な企画である以上、パレードの「主役」である私たち一人一人は、実行委員会に参加してパレードのあり方を決めていく権利があります。
だからこそ、今回のような閉鎖的なパレードの立ち上げ方は、「密室政治」「民主的でない」などと批判を受けます。「オレに付いてこい!」的なやり方でパレードをしようとする限り、人々の反感を買うのは当たり前のことでしょう。
実行委員会内部に序列をつくるのは何故?
私を含め、パレードに関心を寄せる関西の多くの人が、閉鎖的な実行委員会のあり方に対して直接批判の声を上げてきました。その結果、実行委員会は限定的な条件(前提)の下で公開されることになりました。以下が「公開された第1回実行委員会」の案内文です。
次回実行委員会について
(2006.09.24 Sunday | by krp2006)今回のパレードは発案が8月末、実施が10月22日という非常に時間のない中で企画されたものであり、少人数の実行委員会で、パレードの舞台だけをつくるという形式を取りました。
「もっと準備に時間をかけるべきだ」、「もっと多くの人が関われるようにすべきだ」、「もっと内容を充実させるべきだ」という声も聞いており、それらの声は、実行委員会としては真摯に受け止めたいと思います。今回は、初めてのことばかりで、かつ、時間がないこともあり、十分な対応ができずにいることを、この場を借りてお詫び申し上げます。来年以降のパレードに関しては、もっと準備期間をおき、より多くの人が関わり、より充実したものになるよう努力したいと考えています。
是非、来年以降もパレードが続けられるよう、皆さまのお力をお貸しいただけますようお願い申し上げます。関西レインボーパレード2006実行委員会のあり方については、9月21日の実行委員会において以下のように決定しました。
次回より、以下の前提を了承して頂ける方であれば、誰でも実行委員会に参加できます。
○実行委員会の目的は、関西レインボーパレード2006の実施とその成功へ向けた活動であること。
○現在決定されている事項を前提として、実行委員会に参加して頂けること。
○実行委員は、実行委員会で発言する権利を持つこと。
○実行委員は、責任を持って仕事をすること。
○最終的な決定権は、立ち上げ時の実行委員が持つこと。
○実行委員会の招集は、立ち上げ時の実行委員からよびかけること。
○来年度の開催についても継続して行う方向性を持つこと。
パレード実施まで残り約1ヶ月であることから、このような体制をとることに致しました。
多くの方と力を合わせた実行委員会になるよう努力致しますので、どうぞご理解をいただきますよう、お願い致します。次回実行委員会は、10月2日(月)19時~から場所は堺の尾辻事務所で行います。
残念ながら、閉鎖的な作り方をしてきたことで、関西のコミュニティーに対して混乱と不信をつくりだしたことの反省も謝罪もありません。
また、この「実行委員会に参加するための前提」にも問題があります。特に「最終的な決定権は、立ち上げ時の実行委員が持つこと」という前提は、実行委員会の中に序列をつくるもので、これでは民主的な制度とは言えません。mixi上でも多くの人の批判があったため「新しい実行委員の方が、これまでの経緯を理解できないまま、今までの決定をくつがえすようなことがあるとパレードの実行が担保できなくなるから」との見解が「立ち上げ時の実行委員会(以下、旧実行委員会)」から出されています。しかしこれは、これまでの経緯や以前の決定の妥当性を説明して納得を得たら済むことです。もしこれまでの事情を説明しても実行委員会で納得を得られないのであれば、そもそもその以前の決定の方に問題があったということなので、その場合「今までの決定」を撤回するのは当然のことでしょう。
「公開された第1回実行委員会(10/2)」でもこの点は問題になりました。主に尾辻さんが反論をしていたのですが、何かを警戒しているようで、頑として一歩も譲りません。仕方がないので「どうしても気になるなら、『これまでに決まっていること』をリスト化し、このリストのことは決定事項として覆さないことにするというのではどうか」とも聞いてみましたが、それにも全く応じていただけませんでした。
冒頭に書いたとおり、この日の実行委員会の参加者の多数意見は「前提を受け入れる」というものだったので、パレードまではこの「前提」の元で実行委員会が運営されることになりました。
これまでの話し合いの流れから考えるとき、この「前提」は今回のパレードに限って有効だと私は考えています。次回以降のパレードについては、こういった不当な前提のない状態で、誰でも対等に参加できる形で実行委員会が開催されるハズですし、またそうあるべきです。今回残念ながら「前提を承認できない」として途中で実行委員会を退席を余儀なくされた方もおられますが、ぜひ次回以降のパレードの実行委員会にはご参加下さい!こんどこそ「みんな」でパレードを創りましょう。
【全体目次】
サヨナラ、おまかせ民主主義~まず関西レインボーパレードから
開かれた、民主的な、多様性のあふれるパレードを、みんなで創ろう!
■ 関西レインボーパレードの何が問題なのか
●閉鎖的な「立ち上げ時の実行委員会」
●パレードは公的なイベント
●実行委員会内部に序列をつくるのは何故?
■ 尾辻かな子さんについて
●政党との関係について
●「大事なことはみんなで決める」
●社会運動の中のダブルスタンダード(二重基準)
●尾辻さんにみんなの意見を伝えて
●意見の不一致は、私たちの豊かさ
■ サヨナラ、おまかせ民主主義~まず「私たちのパレード」から
●声を上げたから実行委員会は公開された
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