第3回レズビアン・ゲイ・パレード実行委員会への要望書

第3回レズビアン・ゲイ・パレード実行委員会 御中

 今年で東京の「レズビアン・ゲイ・パレード」も3回目を迎えました。レズビアン&ゲイをはじめとするセクシュアル・マイノリティの存在を社会にアピールし、セクシュアリティの多様性を社会にヴィジブルにする当パレードも、全国から集まる様々な立場の人々の参加によって大きく支えられ、定着しつつあるように思います。

 今年は地方でも札幌においてパレードが行なわれ、その名称に「レズビゲイ」と冠することにより、レズビアン&ゲイだけでなくバイセクシュアルの存在をも初めて大きく打ち出すイベントとなりました。レズビアン&ゲイの中にも例えば障害者/健全者などの違いが存在する事も明らかになって来つつあります。また、おそらく日本で初めてのインターセックスの自助グループも活動を開始し、埼玉医科大学においては性転換手術の実施に向けた動きがあらわれています。一方では、横浜国際エイズ会議を飛躍点として、セックスワーカーが日本でもネットワークを拡げ、活動を展開しはじめました。そしてまた他方では、セクシュアリティ(性別・性的指向・性自認など)に関わらず現在の性制度に疑問を持ち、それを当事者として積極的に解体・再構築していこうという様々な活動が、「クィア」という言葉を媒介として出会いつつあります。このように様々な活動が顕在化してくるなかで、それぞれの立場・状況・考え方の違いに私たち自身が気付かされつつあるというのが現状だと思います。パレードは、そういったお互いの違いを私たち自身が知ることのできる場、私たちがいかに自分たち以外のことについて無知で無関心であるかに気付かされる場、様々なセクシュアル・マイノリティの出会いの場という側面からも、ますます重要性を増しつつあります。こうした、立場を超えたマイノリティの連帯に向かう流れの中で、もはや「レズビアン・ゲイ・パレード」は、レズビアン&ゲイのみに支えられレズビアン&ゲイだけのことを訴える、レズビアン&ゲイだけのものに留まらず、広範な人々が関心を寄せ、積極的に関わる非常にオープンな企画になりつつあるのではないでしょうか。

 しかし、残念ながら、今回、京都のグループ「プロジェクトP」の実行委員会への参加申し込みが「レズビアン・ゲイ・パレード継続委員会」によって拒否されました。その理由は、プロジェクトPが提出した意見書(96年4月12日付)の主張内容が「レズビアン・ゲイ・パレード継続委員会」の意見と合致しないからということでした。(*別注参照)しかし私たちは、だからといって、プロジェクトPを実行委員会から排除することによって「レズビアン・ゲイ・パレード継続委員会」の意向のみを結論として押しつけるやり方は極めて不当だと考えます。

 様々なセクシュアリティーや立場の人たちが集うパレードなのですから、パレードを通じてやりたいことに多少の違いがあることは、むしろ当然のことです。そういった違いを、できるだけ多くの人々の間で真摯に受けとめること、自分がこれまで考えてこなかったことを考えるきっかけとしてどれだけ以後に活かしていけるか、などということこそが、パレードを多くの人々の共通財産として育てていくためには必要だと考えます。そのためにも、パレードの基本的な性格等は、パレードに主体的に関わろうという意志のあるものがだれでも参加できる場でこそ、丁寧に話し合い、決定することが必要です。そういった丁寧なコミュニケーションの作風をつくっていくことこそが、自分たちのあり方をなんら問い返すことなくマイノリティーの主張を門前払いのような形で無視し黙殺してきた強制異性愛社会に対して本当に異議を申し立てることになるし、今の社会のあり方とは違ったあり方を具体的に提示していくことになるのだと考えます。

 私たちは「レズビアン・ゲイ・パレード」が、セクシュアリティに関わる問題を社会的に提示する重要な方法であり、場だと考えます。そしてそのパレードのあり方は、どのようなセクシュアリティや立場の人も自由に参加でき、主体的・積極的に関わろうとするいかなる個人および団体も排除されることのない場において対等な形で話し合われ、決定されるべきだと考えます。

 以上のことをふまえ、私たちは、次の5項目を96年8月24日の「レズビアン・ゲイ・パレード実行委員会」の会議において討論及び議決されることを求めます。

1.「パレード実行委員会」に参加を申し込んで断られた団体または個人の有無、あるのならばその理由を含めて明らかにすること。

2.パレードは、様々なセクシュアリティ(性別・性的指向・性自認ほか)や様々な考え方のもの同士が、お互いの違いをそれぞれ尊重しながら共同してとりくむものであるべきであるということをふまえて、今回のプロジェクトPの実行委員会からの排除は誤りであったことを認め、その旨を実行委員会で議決した上でプロジェクトPに対して謝罪すること。

3.「レズビアン・ゲイ・パレード継続委員会」名による4月24日付のプロジェクトP宛文書(プロジェクトPの実行委員会への参加を断る文書)を、実行委員会の名において無効とし、撤回すること。

4.来年度以降のパレードの基本的な性格付けは、パレードの実施に主体的に関わろうとする者は誰でも自由かつ対等に参加できる会議の場において決定すること。その会議への参加について、資格審査に類することは一切行わないこと。会議においては、パレードの名称・目的などの基本的な性格付けや規約の改廃を含め、あらかじめの前提事項を一切設けず、いかなる議題も自由に討論でき決定する場とすること。その会議への参加の呼びかけは、パレードに関心を寄せる全国の様々な個人または団体に対して考えられる限りの広範囲な広報努力をすること。また、ていねいな討論に必要な時間を確保するために、早期に参加の呼びかけを行うこと。

5.上記4項目について、8月25日のプライド集会の場の冒頭に、実行委員長によって報告・提案をすること。その際に、「プロジェクトP排除問題」についてプロジェクトPのメンバーの発言の時間を確保すること。

*注:プロジェクトP及びプロジェクトP排除問題の経過について

 プロジェクトPは正式名称を「レズビアン?ゲイ?バイ?ヘテロ?…生と性は何でもありよ!の会 プロジェクトP」とし、ライフスタイルとセクシュアリティの多様性をその主旨としている京都のグループです。当グループは、1994年に「ゲイの11月祭天国!」という企画を主催した団体が発展してつくられたグループで、95年にはレズビアンをテーマにパネルディスカッションを中心とするイベントを行なっています。プロジェクトPは4月12日付でパレードに参加申し込みをすると共に、意見書でいくつかの問題提起(レズビアン・ゲイ以外のセクシュアル・マイノリティのパレードにおける位置づけ・パレードを「お祭り」にするか「政治的デモンストレーション」にするか・実行委員会の組織の方法、ほか)をしましたが、5月4日に開かれた第一回レズビアン・ゲイ・パレード会員総会以前に、「レズビアン・ゲイ・パレード継続委員会」によって参加申し込み自体を断わられています(4月24日付プロジェクトP宛文書)。理由は意見書の主張内容が「レズビアン・ゲイ・パレード継続委員会」の意見と合致しないからということでした。再度プロジェクトPが6月25日付で同排除問題について要望書を提出したのを受けて、7月20日の「レズビアン・ゲイ・パレード常任委員会」において、4月12日付のプロジェクトPからの意見書について検討がされました。結果は、8月24日に開催される実行委員会にプロジェクトPに出席してもらい発言してもらいたい旨が確認されましたが、同時にプロジェクトPの実行委員会からの排除については「誰にでも実行委員になってほしいというわけではない」として依然撤回されませんでした。
(以上)

署名

 私たちはこの要望書を96年8月24日の「レズビアン・ゲイ・パレード実行委員会」の会議において議案として提案します。また、パレードに関心を寄せる全国の人々に対して、この要望書について関心を寄せられ、賛同人・団体として名を連ねられるよう、強く呼びかけます。

呼びかけ提案団体・個人

  田中玲子 日比野真 服部耕一郎 橋本秀雄 SIN 森田真一

  OLP プロジェクトP ゲイ・フロント関西 ヒジュラニッポン

賛同団体・個人(最終確定・順不同)

 個人

(賛同して署名いただいた83名の個人のお名前はWEBでは省略しています。)

 団体

  大阪ゲイコミュニティー(OGC)  ILGA日本札幌ミーティング  FTM日本  すぺーすへなへな  OWN  ふるふる  札幌ほっけの会  KICK OUT

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