男色右翼活動屋・馬場英行

私と同世代の同性愛者の活動家としてがんばっていた馬場ちゃんが、2004年9月30日に亡くなりました。
馬場英行さん追悼文集編集委員会」が、馬場ちゃんの追悼文集をつくってくれました。ありがとう。
以下は、そこに書かせてもらった私の追悼文です。


文集表紙写真

男色右翼活動屋・馬場英行

 「君、ホモは嫌いかい?」と大書きされたTシャツ。私が「変態左翼活動屋」のブランドでネット販売しているオリジナルTシャツだ。「怒られるかな?」と少し不安もあったんだけど、実は馬場ちゃん、あるイベント会場で1枚買ってくれた。その後、馬場ちゃんは私に対しては、「男色右翼活動屋」と名乗っていた。
 馬場ちゃんとは、ずいぶんと意見が違った。だいたい馬場ちゃんは、自分のホームページの冒頭に「日の丸」を掲げていたんだから。まったくもぅ。さすが、「男色右翼活動屋」を名乗るだけのことはある。それに対し、私は「憲法を改正して天皇制を廃止しよう!」と自分のサイトに書いているくらいだからね。私は、日の丸を今も国旗としては認めませんし、日の丸に頭を下げることはありません。
 もっと意見の食い違いが大変だったのは、ゲイリブについて。お互いが「ゲイ・フロント関西」の役員をしていた頃は、本当によく対立した。「同性愛は趣味ではない、性的指向は選択できない」と主張する馬場ちゃん。それに対し、「若専」や「デブ専」と「同性愛者」とを対等に扱うべきこと(男/女の性別を特権化しないこと)を主張するために「性的指向は趣味だ」という言い方を好む私。全面的な争いになって、本当に大変だった。お互いにね。
 でも実は、私にとって馬場ちゃんは、ゲイ男性の活動家の中で、いろいろやり合った上で仲が悪くならなかった数少ない1人でもありました。なぜだろう、と考えると、それはまず、ちゃんと直接向かい合って議論しあったことが大きいと思う。馬場ちゃんは、卑怯なことは決してしなかった。お互い、相手には敬意をもって接し、礼儀を失うことはなかった(と思う)。「意見の違う人をあらかじめ排除しよう」という動き方をする人が実は関西にもたくさんいる中で、そうではなく、ちゃんと議論しようとした。自分の意見を言葉にし、直接相手に伝え、合意をつくろうとする、そんな馬場ちゃんの生き方は、例えば「野茂とホモの見分け方(扶桑社)」に抗議した時の、馬場ちゃんの丁寧な手紙にも通底していると思う。
 私が2002年にパレスチナに行き、イスラエル軍に身柄拘束された時も、馬場ちゃんはカンパを寄せてくれた。メールに曰く「生きて祖国に帰られて何よりです。思想的立場が違っても賭けるものを持っている日比野さんに感銘を受けました」だって。ただこのメール、そのあと「大阪靖國訴訟が起こり被告にされた靖國神社を支援するため、遺族のかたたちと連携しています。7月12日に口頭弁論が大阪地裁であり、遺族のかたの意見陳述を傍聴してきました」と続くんだから、いい味出してる。
 「我が国保守支持層のなかにも厳然と同性愛者が存在し、昨今の産経新聞コラム『産経抄』のような「論理」の差別性を透けて見抜いているのだという主張を、この際、展開できればと志している」と、トップページに書かれていたホームページを馬場ちゃんが立ち上げた時は、だから「なるほど」と思いました。「人権」「差別」と取り組む(ことになっている)左派の社会運動の内部に隠された同性関係嫌悪(ホモフォビア)を問題化することの困難さを身にしみていた私は、「我が国保守支持層のなか」での同性関係嫌悪に黙ることができなくなった馬場ちゃんの思いは、よく分かる、と思う。「わたしとは、路線が違うところもありますが、馬場ちゃんが自分自身の真実に基づいて発言している、その姿勢が、何より、共感できました」と、サイト開設のお祝いのメールを私は送った。
 お互いずいぶんと意見は違ったけど、人としての信頼関係があった。馬場ちゃんなら、私の好きなこの言葉にも、賛成してくれるに違いない。
「あなたの見ている真実を言うことが一番重要だということ。たとえその”真実”が一般的ではなくてもね」(「パブリック・セックス 挑発するラディカルな性」パット・カリフィア著 東玲子訳

ひびの まこと(http://barairo.net/)

**私との関係において、馬場英行さんは「馬場ちゃん」でしたので、あえてそのままにしました


●馬場ちゃんのサイト
http://www.baba-hour.jp/
(今はリンク集のみです)
●馬場ちゃんのサイトのアーカイブ
http://web.archive.org/web/20031118201103/http://www.baba-hour.jp/
(なんかうまくでないこともあるようですが、トップ一番左が日の丸、そのすぐ右にレインボーフラッグが掲載されていました)


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