トランスジェンダーが提起する問題とは何か

 トランスジェンダー/性自認/性別違和/性同一性障害/性別二元主義/「男女という制度」といったテーマについて、しっかりと考え直してみるためのテキスト集です。
 私自身の書いたものは、時期による少しずつトーンが違います。ですが、そのことも含めて、「人は変わりうる」ということとしてみて頂ければ嬉しいです。(ひびの まこと)


母体保護法第28条を削除せよ!

 先日、埼玉医科大学で性再指定手術(性転換手術)が行われた。 「ああよかったね、これで日本でも手術できるようになったんだね」と無邪気に思っているあなた。あなたはいったいどの立場からそんな無責任な発言ができるのか。
(初出「女?男?いちいちうんざりよ!−性別の二元論を問い直そう」資料集 98年12月5日)

性別にこだわっているのは誰か?

 「俺/オレ」「僕/ボク」「私/わたし」という自称にこだわり、「さん」付け「君」付けされることにこだわり、「本来の自分を取り戻すために」性役割をわざわざ意図的に身にまとい、時には体さえどちらかの性別に合わせてしまう。トランスジェンダーっていう人たちは、なんて性別にこだわっている人たちなんだろう!そんな窮屈な生き方をしなくてもいいのに。————そんなことを思ったことはありませんか?
(初出「女?男?いちいちうんざりよ!−性別の二元論を問い直そう」資料集 98年12月5日)

性別欄を廃止しよう

 「相手が女か男か」で異なる態度をとり、取り扱いが違うのは性差別?性別差より個体差の方が大きい?−では、「相手が男か女か」で好きになるか・セックスをしたいかどうかが違うのは性差別?
(インパクション117号 特集「フェミニズムへのバックラッシュ」 2000年1月25日)

女?男?いちいちうんざり?ホントに?

 トイレや銭湯が男女別に分けられている事は余りにも当たり前にされてしまっており、本当にほとんどの人はそれに何の文句も不満も抱かずに一生を終わっていきます。それほどまでに「私たち」はジェンダー化されてしまっています。私の友人でもあるハヤブサ人生が「銭湯のしきりの壁を壊したい!それが革命だ!」と言っていたのですが、それは決してなにかの例えや極端な例ではなく、性別二元論に基づく性差別をなくすという観点からは当たり前の、最低限の政治的主張でしかない。私たち1人1人が、トイレが「白人(white)」「黒人(black)」に分かれているのを見て当惑するように、銭湯や公衆便所が男女別に「区別」されているのをみて、毎日毎日腹をたて、その設置者に抗議をできるようになって初めて、私たちの意識が性差別から少しは自由になれたと言うことが出来るのだと思う。
(ぽこあぽこ Vol.15 2000年11月23日)

あなたもトランスジェンダーになれる--もし望むのなら。
 性別の自己決定権を確立しよう。

(2003年5月25日 東京早稲田 あかねにて「ひっぴぃ ♪♪スペシャル」)

性別自己決定権とは無縁の 性別変更特例法案

 2003年に可決成立した「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」。一見すると、とても進んだ法律のように思われるかもしれません。でも、本当にそうでしょうか。
(なお、このタイトル「性別自己決定権とは無縁の性別変更特例法案」は、人民新聞編集部がつけたものです。私の感覚からは、やや扇動的すぎると思います。)
(「人民新聞(1149号)」2003/07/05)


注意:わたしの意見は、トランスジェンダーの運動を代表したものではありません。当事者の中にも、様々な路線がありますので、ご自身でお調べ下さい。わたしの意見は、現存する社会の中に受け入れられることを主眼におくのではなく、社会のあり方を全ての人に対してできるだけ平等になるように変えていくことを重視する路線です。クイア系やXジェンダー系という言い方をすることもあります。今の社会の中に埋没していくことを求める(主にパス系の)トランスジェンダーや、いわゆる性同一性障害という概念を本心から受け入れている人たちの主張の路線とはずいぶんと異なりますので、そこはご理解の上お読み下さい。いろんな人の意見を読み比べれば、その違いも分かると思います。